2009年10月17日土曜日

ノーマライゼーション

自分が担当する職場の部署に、聴覚障害を持った社員が入って3ヶ月ほどになる。障害を持った人を自分のチームに迎えるのは初めてのことだ。

聴覚障害を持った人に関する知識を事前に収集する。独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(http://www.jeed.or.jp/)が作成するパンフレットは役に立った。スタッフへの啓蒙のために20部ほしいと依頼したら、ありがたいことに即座に無償で送ってくれた。

顔合わせの面接で、まとまった量の筆談を初めて体験する。口頭では考えもなしに使っている「それでさー」とか「関係ないかもしれないけどさー」などの会話をつなぐ接続句(のようなもの)や、「~だよねぇ」とか「~じゃん」などの文末のニュアンスを表す句を、どのように取り扱えばいいかが分からない。書くのが億劫になってぶっきらぼうな印象になるのは嫌だが、言いたいことを書くのに時間がかかるのは、まだるっこしい。

筆談では、友人宛のカジュアルなメールを書くような文章・文体を使うのが良いと、今では考えている。まず最初に、筆談でも挨拶すること。「こんにちは」でも「元気?」でもいい。こうすると、相手の考えや意見ではなく、相手自身にこちらの関心があることを示すことができるような気がする。また、筆談では文字と筆記具ばかりを見がちになり、相手と顔を合わせることが少なくなるのもいけない。字は汚くなったとしても、書きながらできるだけ顔を持ち上げて相手の顔を見るようにし、こちらの表情からもメッセージやトーンが伝わるように心がける。確かに、手話ができればその方がはるかに効率的なのだろう。手話の入門書は購入していたが、早々に挫折した。

入社から1ヶ月ほどして、この人は、「社会」とか「職場」に接した経験が極めて少ないことが分かってきた。聴覚障害を持った人が一般的にそうなのかは知らない。
  • 遅刻をしない。
  • 勤務時間中は担当する業務に集中して取り組む。
  • 遅刻をせず勤務中に業務に集中するために、仕事の前日は早く寝て睡眠を十分に取る。
  • 仕事を休むときは、速やかに会社へ連絡を入れる。
  • 分からないことや困ったことがあったら、自ら伝える。
  • etc.
こうしたことから伝えていかなくてはならない。聴覚障害よりも、常識(と私が考えていたもの)の違いの方が、乗り越えるのが難しいかもしれない。

このままでは彼はおそらく、私の会社に定着することはできないだろう。彼は自分の居場所を社会のどこかに見つけることができるのだろうか。